重要文化財 来迎院 多宝塔 (茨城県龍ケ崎市)


来迎院(天台宗)
多宝塔
重要文化財
室町時代後期後期(1556年)

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(歴史)

来迎院の開創に関しては不明であるが、多宝塔の修築年が1556年であることから、 それよりずっと以前だと思われる。 本尊は阿弥陀如来の立像である。

重要文化財に指定されている来迎院多宝塔は、室町時代後期の建造物で、関東以北で現存する最古の塔である。  十六世紀に江戸城城主土岐治英が建立したとされ、多宝塔の宝珠の銘文に、「希代廟塔修繕之為檀越」とあることが 確認され、弘治2年(1556)に土岐治英が祖先の霊を祀る希代の塔を修繕するために施主を務めていることがわかり、 建立年代はそれより更に遡るものと思われる。
 建物は三間多宝塔、屋根はこけら葺。 上・下層とも唐様の組物で下層は出組、上層は四手先である。
 下層は各面中央間に浅唐戸を配し、両脇間は欅材の一枚の板壁である。 上層は各柱間に弊軸が立つが、下層中央間に位置する弊軸は一回り大きく、東西面は建具入りとなっている。
 関東地方では非常に珍しい多宝塔形式で、形式上から、また建立年代の古さからも、かなり貴重な仏塔である。


(仏塔訪問日記)

茨城県龍ケ崎市の来迎院へは、東京都大田区の池上本門寺を参拝後、まず「上野駅」まで行き、 JR常磐線特別快速土浦行きに乗って、「佐貫駅」で関鉄竜ケ崎線に乗り換え、そして終点の「竜ケ崎駅」 で降りて、そこから徒歩で20分程度歩いて来た。

私は地方出身者のため、関東地方の地理に詳しくないのだが、茨城県と言えば、 東京から遥か北方に位置してるイメージがあり、電車だと数時間かけないと行けないのではないかと思っていた。
 しかし今回こちらに来るにあたって調べてみると、茨城県南部地域の龍ケ崎市とかなら、「東京駅」からでも一時間かからずに来れることを知った。
 私が知ってる限りで、東京中心部から1時間前後で行ける市と言えば、埼玉県の川越市あたりであろうか。
 だから私はここに来る前、龍ケ崎市の都会レベルは、川越市ぐらいのレベルじゃないかと勝手に思い込んで来たのだが、 龍ケ崎市に到着してみて、その予想は見事に大間違いだということを知った。
 まず、乗り換えのために下りた、龍ケ崎市内「佐貫駅」の駅前で食事をしようと思ったら、 食べる場所はマクドナルドしか無く、仕方がなくそこで食事をする。 そして関鉄竜ケ崎線の終点「竜ケ崎駅」に到着し、 駅前周辺を見るも、周囲は普通の住宅地である・・・。
 そこから来迎院へ向けて歩けば歩くほど、周囲は、のどかで広大な田園地帯になっていった。
 龍ケ崎市の街並みは、川越市などとは程遠く、私的には、その田園風景など、関西で言えば奈良県の広陵町あたりの風景に似ている気がした。
 私は、東京中心部から1時間で行ける場所で、まだこういうのどかな場所が残っていたのかと驚いた。
 そして、「関東に住むなら、ゴミゴミした中心部よりも、のどかで広々したこの龍ケ崎市がいいかな〜」とか、色々想像しながら歩くこと約20分・・・、 広大な田園の向こうに、来迎院多宝塔の屋根が見えてきた。

境内に到着すると、墓地の中に聳える立派な多宝塔の風景が、目に飛び込んできた。
 この来迎院という寺院は、創建等については謎であるが、少なくとも多宝塔修築の1556年よりは前だそうだ。
 しかし、狭い境内には多宝塔以外に古い現存建造物は無く、比較的新しそうな本堂と、お墓があるだけの印象だった。
 だから、ここへは重要文化財の多宝塔を見学するためだけに来たことになるが、それでも、それだけのために遠い関西からわざわざ来た甲斐はあったと私は感じる。
 まず、多宝塔そのものに関してだが、13mと小ぶりであるにもかかわらず、非常に安定感があり、かといって無骨でもなく、 優美さを併せ持つ。
 私は全国の国宝・重要文化財指定の多宝塔を数多く見てきたが、現存多宝塔が少ないと言われている、関東のこの地で、これほど すばらしい多宝塔に出会えるとは、正直思っていなかった。
 来迎院に来たことで、私が未訪問の重文指定多宝塔は、 埼玉県の金鑚神社多宝塔と、千葉県の石堂寺多宝塔のみとなった。
 私の居住地の地理的な理由で、関東地方の2基が残ってしまったわけだが、来迎院多宝塔を見たことにより、それらに対する期待が更に高まる結果となった。

多宝塔そのものの素晴らしさもさることながら、周囲の風景に溶け込んだ多宝塔風景も美しい。
 『大都会東京の都心部から電車で1時間程度の場所にあるのどかな田園風景』と、 『関東では非常に珍しい古い多宝塔がある風景』という、ある種、意外な風景どうしではあるが、 それらが合わさることによって、何とも風情のある素晴らしい風景が作り出されている。
 私はその風景に感動し、帰りはあえて関鉄竜ケ崎線に乗らず、乗換駅である「佐貫駅」までの 3〜4kmほどの道のりを歩いて行くことにした。

遥か先まで真っ直ぐに伸びている県道を歩きながら、私は、来迎院の方を振り返ってみた。
 すると、あまりにも広大で、視界を遮るものがないこの田園の中では、どこまで歩いて振り返っても、多宝塔の屋根が視認できるではないか・・・。
 私はその多宝塔の屋根が、小さくなって見えなくなるまで、いつまでも振り返り続けていた・・・。


初回訪問日&撮影日 2012年12月20日


@のどかな田園地帯

宅地開発が進む関東地方にあって、東京中心部から電車で1時間程度の場所とは思えない程、のどかな田園地帯だ。


A電車の窓からも見える多宝塔の屋根部分

多宝塔の屋根は、関電竜ケ崎線の車窓からもはっきり見えていた。


B来迎院境内

境内は広くなく、多宝塔と本堂、そして、お墓と駐車場のみといった印象。


C本堂

比較的新しそうな本堂。 建造年や、元々の本堂がいつ無くなったかなどは分からない。


D多宝塔(重要文化財)

その重要文化財指定は、平成18年12月19日と、比較的最近だが、その指定基準は、 形式的、地域的特色において顕著であるということである。
 来迎院多宝塔よりも古い多宝塔の現存例は、近畿や東海地方で数多く存在するが、北関東という、古い多宝塔の現存が極端に少ない地域に、 これだけ完全な状態で現存しているという点も、重文指定の審査で重視されたのだろう。


E多宝塔上層部

平成10〜12年に改修が行われているため、保存状態もいい。


F上層部木組部分

北関東における室町時代の多宝塔の特徴をよく示す 数少ない遺構として非常に貴重な多宝塔である。


G墓地の中に建つ多宝塔

墓地の中に建っている点では観光寺院っぽくないが、それでも数多くの人々がこの多宝塔を見学しに訪れるという。


H佐貫駅までまっすぐ続く道

来迎院から「佐貫駅」まで、3〜4kmの道のりであるが、平坦で真っ直ぐな道である。
 青空の下、知らない土地の広々とした田園地帯を歩いていると、非常に清々しい気分になった。

交通アクセス
関東鉄道竜ヶ崎線、「竜ヶ崎」駅下車 徒歩約20分
JR常磐線「佐貫駅」から龍ケ崎市コミュニティバス循環外回りで7分、馴馬下車、徒歩5分

駐車場 有

仏塔巡礼ドライブ難易度 易しい(★★)

★1つ→非常に易しい
★2つ→易しい
★3つ→ふつう
★4つ→難しい
★5つ→非常に難しい

池上本門寺へのおすすめアクセス方法

自動車によるアクセスが楽だが、20分程度の徒歩が苦じゃないなら「竜ケ崎」駅からの徒歩でもいい。

住所

茨城県龍ケ崎市馴馬町2362

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