国宝 有楽苑 如庵 (愛知県犬山市)








有楽苑
如庵
国宝
元和4年(1618)

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(歴史)

織田信長の実弟であり、尾張国出身の大茶匠、織田有楽斎(1547〜1621)は晩年、武家を棄て京都建仁寺の正統院を 隠居の地とし、再興する。 その際、元和4年(1618)頃に建造された茶室が如庵である。  時が流れて明治6年(1873)に正統院は永源庵跡地に移転し、更に明治41年(1908)には東京の三井本邸に移築し、 三井の重役であり茶人の益田孝がこれを愛用した。  昭和11年(1936)には重要文化財(旧国宝)に指定され、昭和13年(1938)に三井高棟によって 神奈川県中郡大磯の別荘に移築された。  昭和26年(1951)に文化財保護法による国宝に指定され、最終的に昭和47年(1972)に、名古屋鉄道によって、 名鉄犬山ホテル敷地内の現在地に移築。 「有楽苑」と名付けられた。
 如庵は、柿葺き入母屋風の妻を正面に向けた二畳半台目の向切りの茶室であり、 現存する国宝茶席三名席の一つとして貴重である。


実験的企画 国宝建築評価チャート図

国宝建築の能力値をサイト管理人が独断と偏見で点数化

(※)評価基準

○歴史 建造物の建立された年代の古さを点数化したもの。
 飛鳥時代以前(20点)、奈良時代(19点)、平安時代(18点)、 鎌倉時代(17点)、南北朝時代(16点)、室町時代(15点)、戦国時代(14点)、安土桃山時代(13点)、江戸時代前期(12点)、 江戸時代後期(10点)、明治時代(8点)、大正時代(6点)、昭和時代前期(5点)、昭和時代後期(3点)、 平成時代以降(1点)

○迫力 建造物の巨大さ、あるいは見た目の迫力を点数化したもの。

○美しさ 見た目の美しさを点数化。

○希少性 その意匠や形式などが同じ分類である建造物の現存例の少なさを点数化。

○おすすめ度 管理人のおすすめ度を点数化。主に観光満足度、その他、インパクトなどを重視。

以上はすべて、正式なものではなく、管理人の独断と偏見による評価である。


(国宝建造物訪問日記)

この日は朝から、『国宝・湖南三山めぐり』というイベントが、滋賀県湖南市の長寿寺、善水寺、常楽寺で行われており、 その中で唯一未拝観であった長寿寺を見学した。
 見学を終了し、バスに乗ってその最寄駅のJR草津線「石部」駅に帰った時点で、まだ午前10時すぎ。  このまま大阪に帰るのはもったいないぐらい時間が余ってしまった。 そこで、滋賀県周辺でついでに立ち寄れる 国宝建築はないか考えてみたが、滋賀県内の国宝建築はもうすべて訪問済み。  京都府内に未訪問の国宝建築がいくつかあったが、通常非公開のものばかりである。  となると、いつでも見学できる上に、未訪問で、滋賀の現在地から最も近い国宝建築はどこか考えてみたら、 自然と愛知県犬山市にある国宝・如庵という答えが出た。
 ただし、乗換案内で調べると、国宝・如庵の最寄り駅である「犬山遊園」駅へは、現在いるJR「石部」駅から、 電車を乗り継ぎ、2時間37分かかり、交通費は片道2390円である。
 現在地から気軽に立ち寄れる場所であるとは到底言えなかったが、それでも行って帰ってくるには十分すぎる時間が あったので、迷わず決行することにした。

ところでこの「犬山遊園」駅。 実はここへ来るは始めてではなく、以前に同じく国宝の 犬山城を見学した時に来たことがある。  なぜ犬山城へ来た時に、如庵も見学しなかったのかというと、当時、国宝 ・犬山城のすぐ近くに如庵という国宝建築があることを知らず、 見事にスルーしてしまっていたのだ。
 それから時が流れること実に5年。  今回ついに国宝茶席三名席の一つ、如庵を見学することになったのである。

約2時間30分電車を乗り継いで「犬山遊園」駅を降りた私は、すぐに国宝・如庵がある名鉄犬山ホテルの方へ歩いて行ったのだが、 すぐにはそこに入場せず、素通りして、ある場所へ向かった。  そのある場所とは、犬山市文化資料館である。
 ここは主に犬山城やその城下町に関する資料が展示されており、 犬山城の記念メダルが販売される唯一の場所である。
 私は以前から日本各地の史跡や観光名所にある記念メダルを集めているのだが、 この犬山城のメダルは犬山城自体では販売しておらず、この犬山文化資料館でのみ販売している。  だから以前に犬山城を見学した時もその存在を知らなくて、今回近くの有楽苑如庵を見学するのを機会に、 そちらも立ち寄って購入することにしたわけである。
 あらかじめサイトで調べたら、記念メダル自動販売機は資料館の外に設置されているということだったので、 私は今回は犬山城を見学に来たわけではないので、資料館には入らずにメダルだけ購入してさっさと如庵へ行くつもりでいた。  しかし来てみると、自動販売機は館内に移動しており、結局資料館に入場料を払って入ることになってしまった。
 とはいえ入場料はたかだか100円であり、その100円で近くのからくり展示館も見学できたので、 せっかくならと、両資料館ともじっくりと見学させてもらったのち、いよいよ如庵がある名鉄犬山ホテルの方へ歩いて行った。

名鉄犬山ホテルの敷地にはいり、しばらく歩くと、有楽苑の入口入場料販売所に到着。  入場料を支払い中に入ると、苑内は先ほど行った長寿寺にも勝るとも劣らぬ紅葉が真っ盛りで、 非常に多くの人びとが苑内を見学していた。  奥に進むと最初の建物があり、早速国宝如庵か?と建物の写真を撮りまくったが、 それは如庵ではなく、元庵という有楽斎が大阪・天満に構えた茶室を古図にもとづいて復元したという建物だった。  更に進み、重要文化財・旧正伝院書院や、庭園、徳源寺唐門、弘庵などを経て、萱門をくぐると、 ついに国宝・如庵の建物が見えた。  私は早速近寄って写真を撮ろうと思ったが、如庵の周囲の狭い庭園内では、 スーツ姿の中年男性の集団がガイド役の女性に何やら説明を受けており、 それがなかなか終わらなかったので、仕方がないから苑内をもう一周してまた戻ってくることにした。
 戻ってくると、既に先ほどの中年男性の集団はいなくなっており、思う存分見学し、撮影することができた。  ただし、如案が建っている庭園内が非常に狭いこともあり、正面からと、 如庵からみて右斜め前からのツーパターンのみの撮影となった。
 私は現在まで数多くの国宝建築を見てきたが、意外にも茶室の国宝建築はこの如庵が初めてである。
 小さいが非常に趣があって美しい建物だ。

ところでこの如庵。 京都の大山崎町にある妙喜庵「待庵」や、京都市北区にある大徳寺塔頭の龍光院「蜜庵」とともに、国宝三茶席の一つとされているのだが、 その中では唯一、外観のみとはいえ、自由に撮影できる国宝茶室である。
 ちなみに妙喜庵「待庵」は、その見学には事前申し込み予約が必要で、その際にも撮影は一切禁止。
 龍光院「蜜庵」に至っては、予約すら受け付けておらず、一切の拝観が禁止されている。
 それらに対して如庵は、内部の見学には予約がいるものの、外観はいつでも見学し撮影も可能と 非常に太っ腹だ。

京都の国宝建築を管理する人びとには、閉鎖的な人が多いのかどうなのか、 撮影が禁止された国宝建築が非常に多い気がする。
 如庵も、もとはといえば、京都建仁寺正統院にあったものが、あちこちに移転されたのち、現在地に落ち着いたものである。
 もしも如庵が現在まで京都に残っていたとしたら、間違いなく写真撮影は禁止され、 下手すれば非公開とされていたかもしれない。
 仏像や工芸品などや、建物の内部の撮影を禁止するのはある種、仕方がないとは思うが、 外にある建物の外観の撮影を禁止するのは、あまりにも偏狭的と言わざるをえない気がする。

ある意味、如庵は、現在地に移転されて良かったと言えるかもしれない。
 建物外構の撮影を許された、日本唯一の国宝茶室なのだから。


初回訪問日&撮影日 2016年11月21日

(※国宝建造物撮影ポイント)
外観は撮影自由、内部は撮影禁止

@名鉄犬山線「犬山遊園」駅

名鉄犬山ホテルの最寄り駅。


A名鉄犬山ホテル

開業は昭和40年(1965)。 元々名古屋鉄道グループの犬山遊園があった跡地を活用して、当時名古屋の帝国ホテルと呼ばれていた名古屋観光ホテルと合弁でスタートし、名古屋の政財界のフォーラムなどにも用いられるなど奥座敷に相応しい格式も併せ持っているという。


B出札所売店


C苑内の紅葉


D旧正伝院書院(重要文化財)

如庵と同じく元和4年に、如庵に隣接して建てられた有楽斎の隠居所である。  入母屋造の建物の内部には長谷川等伯・狩野山雪など、貴重な襖絵がある。


E岩栖門

文明年間細川満元の建立。 武家屋敷の門の代表作。


F弘庵

苑内で催される様々な茶会のために新設された茶席。


G含翠門


H徳源寺唐門

織田高長が大和宇陀郡に建立。 織田家の菩提寺。 唐門のみが残る。


I萱門


J如庵(国宝)


K如庵(国宝)


L元庵

有楽斎が大阪・天満に構えた茶室を古図にもとづいて復元。 三畳台目の茶室内部は奥に深い間取りで、亭主床と呼ばれる 床構えになっている。


M犬山城の記念メダル

如庵とは無関係。 近くの犬山市文化資料館で購入。 今回は犬山城自体には立ち寄らなかった。

アクセス
名鉄犬山線「犬山遊園」駅から徒歩7分

駐車場 名鉄犬山ホテルの駐車場が有

国宝建造物巡礼ドライブ難易度(★★)

(★)・・・・・・・・・・非常に易しい
(★★)・・・・・・・・易しい
(★★★)・・・・・・ふつう
(★★★★)・・・・難しい
(★★★★★)・・非常に難しい

国宝巡礼おすすめアクセス方法
どのアクセス方法でも問題ない


484-0081 愛知県犬山市御門先1番地

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