重要文化財 日龍峰寺 多宝塔 (岐阜県関市)


日龍峰寺(高野山真言宗)
多宝塔
重要文化財
鎌倉時代後期(1333年)

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(歴史)

寺伝によると、仁徳天皇の時代(5世紀前半)、美濃国の両面宿儺(りょうめんすくな)という豪族が、この地方に被害を及ぼしていた龍神を退治し、龍神の住んでいたこの山に、祠を建立したのが始まりと伝わる。
 鎌倉時代には、北条政子によって再興されたと伝えられている。 室町時代、応仁の乱によって多宝塔を残し堂宇の大半を焼失した。
 その後、江戸時代になって現在の伽藍が整えられた。 別名、高澤観音ともいう。

重要文化財のこの多宝塔は、山内で唯一、応仁の乱以前の建造物であり、北条政子によって建造されたとされる非常に貴重な塔である。
 檜皮葺屋根で、亀腹は漆喰。 内部には大日如来を安置する。


(仏塔訪問日記)

この日は大阪の自宅から自動車で、日龍峰寺多宝塔(岐阜県関市)→永保寺開山堂と観音堂(岐阜県多治見市)→松阪城(三重県松阪市)というルートのドライブをし、 最初に来たのが、この重要文化財の多宝塔を有する日龍峰寺だった。
 今まで岐阜県内の重文仏塔は、主に電車やバスなど、公共機関を利用して来ていたのだが、この日龍峰寺だけはどうしても 電車+バスでは行きにくい場所だったので後回しになっており、今回は念願かなって車での訪問となったわけである。
 日龍峰寺は、高沢山(360m)の山頂近くにある岐阜県下で最も古い寺院である。
 参拝客も多い有名寺院なので、そこへ向かう林道も、離合が容易な広々した道を想像していたのだが、意外と狭い部分が多く、 おまけに対向車もけっこう降りてきたので、何度かバックしてハンドルを切り返す場面に遭遇した。
 ここ最近の史跡巡りは、道路が整備され、広々した、簡単な道ばかり走っていたので、日龍峰寺への道は久しぶりに、 手応えがあった気がする。 よってドライブ難易度は★四つと、少し高めに設定したが、安全運転で行けば、京都の金胎寺や、兵庫の名草神社ほど難しくないので安心いただきたい。
 そんなこんなで、途中に仁王門に立ち寄りつつも、広々した駐車場に到着。 そこから徒歩で移動すると、 すぐに鐘楼、金比羅堂、そしてメインである多宝塔も見えてきた・・・。
 岐阜県下最古の塔であるこの多宝塔。 1333年建立と、国宝指定仏塔と比較しても遜色ないぐらい古く、保存状態も抜群である。
 さらに、北条政子が建てたと伝わり、悪名高き応仁の乱で、境内の堂宇の大半が灰塵と化すも、奇跡的に残ったという、 非常に貴重な多宝塔である。 おそらく重要文化財指定仏塔の中で、最も国宝に近い仏塔の一つと言えるのではないだろうか。
 素晴らしいこの多宝塔が、北条政子再建期という古い時代から、奇跡的に現存しているだけに、「美濃清水」の異名で知られる巨大な舞台造の本堂が江戸期の再建であり、 元々の本堂が、応仁の乱という、世俗に塗れた蛮人たちの反乱によって、焼失してしまったということは、残念というより他、言葉が思い浮かばない。
 江戸期再建とはいえ、舞台造で巨大な本堂は、こういう山深い場所にあることによって、迫力が倍増している気がする。
 私は応仁の乱に対する深い憤りなど、とっくに忘れて、立派な本堂を、そして実質的には国宝にも匹敵する、 重要文化財の多宝塔を、しばらくの間眺めていた。

→次の訪問地は、岐阜県多治見市の、国宝・永保寺(開山堂観音堂)である。


初回訪問日&撮影日 2012年11月25日


@仁王門

享保3年(1718)建立。 自動車を走らせていると最初に見えてくる。 駐車場はまだこの先である。


A駐車場

狭い山道を走ってきた先に、このような広々とした立派な駐車場がある。


B鐘楼

駐車場から境内に入っていくと、最初に見えてくる建物である。 昭和12年に再建されたものだという。


C金比羅堂と多宝塔

少し歩くと、多宝塔もすぐに見えてくる。


D多宝塔(重要文化財)

元弘3年(1333)の建立。 三間多宝塔で檜皮葺屋根、総高は14.7m、上重は漆喰でかためた円い亀腹の上にのる。 その大きな屋根と高い相輪で、全般的に均衡がよくとれており、丹塗の色も環境とよく調和している。


E多宝塔別角度(重要文化財)

組物は四手先、その尾垂木鼻は木鼻とともに天竺様の深い繰形をつける。 下重の中央間には散八双[をうった板扉をはめ左右の間は連子窓とする。 縁は切目縁で勾欄はない。  組物は面取の出組とし垂木にも大面をとる。  内部は極彩色のあとがわずかずつ残り、天井は繊細な2重折上小組格天井になっているという。


F本堂と籠堂(ともに岐阜県指定文化財)

向かって左の本堂は寛文10年(1670年)建立で、右の籠堂は文化3年(1806年)の建立。 大きな木が手前にあるので、 建物全体を写真に収めるのは至難。


G本堂と籠堂(ともに岐阜県指定文化財)

本堂の前方は舞台造り(懸崖造)で、見ての通り京都の清水寺によく似ており、 美濃清水の異名で世に知られている。


H本堂(岐阜県指定文化財)

もともとの建物は応仁の乱の戦火で犠牲になったため、現在の建物は江戸時代1670年の再建である。


I本堂内部

本堂内部には色々な絵が所狭しと掛けられていた。


J本堂別角度

階段はかなり急である。


K本堂と籠堂

山奥のこの場所に、これだけ規模が大きく見事な懸崖造の建造物は珍しい。

日龍峰寺への交通アクセス
富加・関IC から 車 で 15 分

駐車場 有

仏塔巡礼ドライブ難易度 難しい(★★★★)

★1つ→非常に易しい
★2つ→易しい
★3つ→ふつう
★4つ→難しい
★5つ→非常に難しい

日龍峰寺へのおすすめアクセス方法

自動車によるアクセスしかないと思われる。 ただし、離合困難な狭い道が所々にあり対向車もそこそこ来るので、運転には注意を要する。
公共機関によるアクセスは、最寄りのバス停から非常に遠く、バスの本数が少ないのであまりおすすめしない。

住所

〒501-3521 岐阜県関市下之保4585

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